茶道のデジタルアーカイブ化による作法解析project in 2014

茶道点前作法のデジタルアーカイブ化

茶の湯の文化は明治維新以後、西洋化により衰退期を迎えている。さらに現代では「茶道は年配の方が嗜む、敷居が高いもの」という意識が若い世代の中に浸透され、茶道は多くの人々にとって身近なものでなくなった。今後さらに茶道人口の減少や高齢化が進み、これまで長年受け継がれてきた日本の伝統文化
である茶の湯の文化が日々失われる状況にある。本研究の目的はモーションキャプチャによって各流派の動作解析を行い、デジタルアーカイブ化することで文化財としての茶道の点前作法を後世に残す。また取得したデータをCG と統合させ3D アニメーションを製作し、茶道の裾野を広げることを目的とする。

三千家「薄茶平点前」を計測

本研究では、三千家の茶道教授の協力の下、データの計測を行った。各流派で所作は異なるが、ほとんどの流派に共通する基本的な薄茶平点前の所作を計測した。

キャプチャデータをもとに所作を解析

モーションキャプチャで得られたデータから速度や加速度、セグメントの回転角度などを解析した。ここで左腕平均速度、左手平均速度、右腕平均速度、右手平均速度、右手首角度、右肘角度を図のように定義し点茶における所作の解析を行った。

表千家流薄茶の点て方

表千家流のお茶の点て方の特徴は適度に泡立て、泡の無い部分( 海) が半月状に残るようにする。点茶の際の茶筅を振る動作は三 段階に分けられ、一段階と二段階では茶筅はゆるやかに、手首だけでなく腕全体を動かすようにまんべんなく回す。三段階では泡 の無い部分が半月状に残るように茶筅を回しながら茶碗から抜く。

両腕と両手の平均速度と右手首と右肘の回転角度の解析

一段階では約2.3 秒の時間をかけ、一秒間に約13 回手首を曲げていることが分かる。二段階では約4.6 秒の時間をかけ、一秒間 に約8.7 回手首を曲げていることが分かる。また一段階と二段階と三段階を合わせた約8.8 秒間に右手首を72 回曲げて茶筅を振っ ていることが分かる。

裏千家流薄茶の点て方

裏千家流のお茶の点て方の特徴は、お茶の表面を全て細かい泡がふっくらと覆い、中心が盛り上がる程度に泡立てる。点茶の際の 茶筅を振る動作は三段階に分けられ、一段階では茶筅はゆるやかに、手首だけでなく腕全体を動かすようにまんべんなく回す。二 段階では湯の中ほどで茶筅の先を前後にまっすぐになるべく早く、細かく振り、泡を立てる。三段階では徐々に茶筅の先を浮かせ て軽く振りながら大きな泡を消し、最後はひらがなの「の」の字をゆっくりと書いて中心が盛り上がるように茶筅を抜く。

両腕と両手の平均速度と右手首と右肘の回転角度の解析

茶筅の振りが比較的緩やかな一段階では約3.5秒の時間をかけ、一秒間に約4.2回手首を曲げていることが分かる。茶筅を振る速度が速く、細かい二段階では約7.6秒の時間をかけ、一秒間に約13回手首を曲げていることが分かる。また一段階と二段階と三段階を合わせた約12.7秒間に右手首を124回曲げて茶筅を振っていることが分かる。

武者小路千家流薄茶の点て方

武者小路千家流のお茶の点て方の特徴は、茶碗を茶筅の側に少し傾けて左手で支えお茶を点てる。空気が入らないよう、茶筅を円 運動させ適度に茶筅を振る。点茶の際の茶筅を振る動作は三段階に分けられ、一段階では茶筅の動きは上下運動ではなく円運動で なるべく早く、細かく振る。このように茶筅が動いているときは、泡はあまり立たない。二段階では茶筅を振る速度を緩め、まん べんなく回す。三段階では茶筅を振る速度をさらに落とし、茶筅を回しながら茶碗から抜く。

両腕と両手の平均速度と右手首と右肘の回転角度の解析

茶筅を振る速度がピークを迎える一段階では約4.1 秒の時間をかけ、一秒間に約8.3 回手首を曲げていることが分かる。茶筅を振 る速度が徐々に遅くなる二段階では約2.8 秒の時間をかけ、一秒間に約6.4 回手首を曲げていることが分かる。また一段階と二段 階と三段階を合わせた約8.2 秒間に右手首を58 回曲げて茶筅を振っていることが分かる。