タコの吸盤をモチーフにした強力吸盤構造の研究
生物の特性を工業的に再現することでその特性を工業製品に持ち込むバイオミメティックの研究。
バイオミメティックの視点からエラストマー樹脂の新たな可能性を探る研究開発。
現在、エラストマー素材は、絶縁体・ガスケット・Oリングといった部材や素材そのものを用いたタイヤや輪ゴム、生活雑貨といった工業製品等にまで幅広く用いられている。また、エラストマーの成形技術に関しても、その進歩は目覚ましく、表面加工や、微細な造形を施すことにより、その素材特性にまで切り込むこ
とが可能である。そこで本研究では、エラストマーのさらなる製品可能性を探る。今回は私たちの身の回りで用いられる「吸盤構造製品」の機能向上を目的とした開発を行った。実際にタコの吸盤を観察すると、吸着時に吸盤内の気密度を高める空気抜き室が存在する。また、タコの吸盤はビニルよりもエラストマー樹脂に近い素材である。そこでエラストマー樹脂を用いた新しい吸盤構造を設け、強力な吸盤を開発した。
タコの吸盤
タコの吸盤は肉質が円柱状で中に空洞がある。吸盤内部の筋肉を収縮させ、減圧することにより吸着する。これは吸盤製品には存在しない。また、吸盤の吸着面は、常に新鮮に保つため薄皮状に脱皮する。
空気抜き構造の設計
既存の吸盤製品の外形寸法を保持しながら、新たに空気穴を上部に設ける。この空間により、吸着時に
吸盤内に残った空気の逃げ道を作り、吸着面の真空状態が高まることによって吸着力を向上させる。